骨造成(こつぞうせい)とは、顎の骨(歯を支えている歯槽骨)が足りない場合に行う補助的な手術です。
骨造成では骨補填材を用いて顎の骨量(骨密度)を増やし、フィクスチャーを埋め入れるために必要な顎の骨の高さや幅の確保につなげます。
今回は顎の骨が足りない場合に行う補助手術「骨造成」についてご説明します。
目次
■骨造成が必要な理由
◎フィクスチャーを安定させるためには顎の骨の高さと幅が必要
インプラント治療を行うには、患者さんに一定以上の顎の骨の高さと幅・骨密度があることが前提条件になります。
顎の骨の高さと幅・骨密度が足りない場合、そのままの状態でインプラント治療を行うとフィクスチャー(人工歯根)を安定させられない可能性があります。
上記の理由から、顎の骨が足りない場合には骨造成で顎の骨の高さと幅・骨密度を増やすことで、インプラント治療を受けられる状態に近づけていきます。
◎顎の骨が足りない状態でインプラント手術を行うのは危険
顎の骨が足りない状態でインプラント手術を行うのは危険です。
顎の骨の高さと幅・骨密度が不足している状態でインプラント手術を行った場合、以下のようなトラブルが起きる可能性があります。
・フィクスチャーが顎の骨に結合しない
・フィクスチャーが顎の骨を突き破る
・フィクスチャーが歯槽骨の外側や内側に飛び出す
■骨補填材の種類
◎患者さんに適した骨補填材を用い、顎の骨を増やしていきます
骨造成では骨補填材を用い、骨の再生をうながす(or誘導する)ことで顎の骨を増やします。インプラント治療で用いられる骨補填材は以下の4種類です(※)。患者さんの状態に合わせ、適切な骨補填材を用いて顎の骨を増やしていきます。
・自家骨(じかこつ)··········· 患者さんご自身の骨(主に下顎の骨)から採取します
・他家骨(たかこつ)··········· 他の人の骨から採取します
・異種骨(いしゅこつ)········· 動物の骨から採取します(ウシ焼成骨)
・人工骨(じんこうこつ)······· コラーゲンやリン酸カルシウムから作られます
(※)日本国内では他家骨を用いた骨造成は
ほとんど行われていません。
◎もっとも一般的なのは自家骨
インプラント治療の骨造成でもっとも一般的に用いられる骨補填材は患者さんご自身の骨から採取する「自家骨」です。
自家骨は患者さんの下顎(オトガイ部)から採取することが多いです。以前は太ももの骨から採取していた時代もあったのですが、身体への負担が大きいため、現在はあまり行われなくなりました。
自家骨は患者さんご自身の骨のため、異物反応(拒否反応)がほぼ起きません。骨を再生して増やす骨造成には、異物反応が起きにくい自家骨が適しています。
◎異種骨、人工骨を用いる場合も
患者さんご自身の骨である自家骨のほか、異種骨、人工骨を用いる場合もあります。
異種骨、人工骨のメリットは自家骨を採取するために手術を行う必要がない点です。異種乙、人工骨を用いることで、採取のための手術で生じる患者さんの肉体的・精神的負担を減らせます。
■骨造成の流れ
◎先に骨造成を行う方法のほか、インプラント手術と骨造成を同時に行うやり方もあります
骨造成の方法は主に以下の2種類があります。
①先に骨造成手術を行い、顎の骨を増やした上でインプラント手術を実施する
②骨造成とインプラント手術(フィクスチャーの埋め入れ手術)を同時に行い、顎の骨を増やしながらフィクスチャーを骨に結合させる
【骨造成でインプラント治療を行える可能性を高める】
顎の骨が足りない場合、クリニックによってはインプラント治療を断られてしまうケースも。
顎の骨が足りない、という理由で治療を断られても、歯科医院はそのクリニックのみではありません。ほかのクリニックでは、骨造成をすることでインプラント治療を行える可能性があります。
一つのクリニックで治療を断られた場合もあきらめず、複数のクリニックを訪れてインプラント治療が可能かどうかを尋ねることをおすすめします。